カタナ月記  Last Update: 2007/10/10 First Update: 2006/06/06
(※)永冶氏に手直しして戴いたセッティングの内容を、『FCRのセッティング表』に追加しました。

キャブ仙人のFCRセッティング

モトメンテ誌の連載でお馴染みの“キャブ仙人”こと永冶 司氏に、
FCRのセッティングをして戴きました。

僕がほぼ毎回参加しているClub@SRX全国オフにおいでになられるとのことで、
この機会に、刀を診ていただけないかと(図々しくも)打診したところ、
「FCR?5分で片付けまっせ!」…とゆう力強い回答が!

あちこちだめだしされたらどうしよう…、という不安を抱えつつ、
中央高速をひた走るmakotoさんなのでありました。

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東海北陸自動車道の各務ヶ原ICを降り、XJR1200乗りであるharabow氏の先導で、無事、NAG S.E.D.に到着。
挨拶もそこそこに刀号のスロットルを握り、ブリッピングを始める永冶氏。

目の前に調子を崩したオートバイが存在することに
我慢できないという感じでした。
※真剣な表情で刀号のセッティングをチェック中のキャブ仙人。


   ヴォン、ヴォン、ヴォン。

   ボボボボ…。ヴヴッヴァアアアン! ヴォヴォヴォ…。

   かち。 (イグニッションをOFFにする音)


その間、僅か30秒程。

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永冶氏:「やっぱり下が、濃いね。
     そこの角を曲がったところから、アー、ごぼごぼ言ってるって思っていたんですよ(笑)」

僕:「そ、そうですか。ぜんぜん自覚なかったんですが…(汗)」

永冶氏:「ASは何回転戻し?」

僕:「確か、二回転ですね」

永冶氏:「ちょっと戻し過ぎだな。
     FCRの場合、ASは一回転半戻し、PSは一回転戻しが標準だから、そこに落ち着くSJを選択する。
     AS二回転戻しでまだ濃い症状なら、SJは絞った方がいい」

僕:「SJは…、今50番が付いてます」

永冶氏:「小さいのはある?」

僕:「48番なら」

永冶氏:「たぶん、それがベストだと思いますよ」

仙「…ボロいね」
harabow氏「ええ、汚いですね」
(注:二人ともそんな酷いことは言いません。)

 キャブ仙人が刀号のFCRを診てくださっている、とってもありがたあい光景。

 え、そうは見えない?それは、貴方の目が暗く淀んで濁っているからです。

 レース用2stキャブの礎を築いたと言っても過言ではない人ですが、4st用の扱いも手馴れたもの。

約6年間、4万km弱使用。
ドレンパイプが変色して、嫌な色になってる…。

 キャブ本体を傾けて、フロートがストッパーに当たった時、

 全気筒がぴたりと並行にならなければいけない。…のだが、1番と4番がちょっとずれていた。

 実はmakotoさん、一度もFCRの油面調整をしたことがない(だってしなくても普通に走るんだもん)

フロートバルブも経年劣化でピンク色に染まっています。
新品は真っ白。

 あ、こんな感じですね。

 今回は永冶氏が直接手を汚してくださいましたが、いつもはお客さんに指示して自分でさせるらしいです。

 永冶氏曰く、「自分でできた方が、いいでしょ」とのこと。

ひっくり返して、吸気側からキャブクリーナーを吹くだけでも
かなり汚れが落ちてくれる。

 キャブクリーナーで軽くお掃除。暫くすると、アルミ製のトレイが真っ黒になった(汗)

 永冶氏:「ハリ(JN)の径はいくつ?」

 僕:「Pです。0CFMP」

 永冶氏:「いいネ。ハリは、NかPかって言われるくらいだよ」

実は、僕が装着していた50番のSJも、
いっこ穴が小さかった。

 ひみつ兵器の拡大鏡でSJの径を念入りに確認。

 メーカーは否定するかもしれないけれど、刻印通りに穴が開いていないことがあるらしい。

 「昔は、ぱっと見るだけで分かったんだけどね…」と、寂しそうに語る永冶氏。

 でも、フツーの人は老眼でなくたって、SJの48番と50番を目で見分けることはできません。

永冶氏:「ちゃんと調整したつもりでも、
(ガタとかによる)落とし穴があるんだよね」

 続いて、同調調整。アイドルスクリュウをいっぱいに戻してスロットルドラムを押した時、

 バタフライバルブが開いて吸気ポートに隙間ができるタイミングが四気筒ぴったり揃う様にする。

 僕のFCRは、リンクの穴が磨耗してガタが発生しているので、

 いい感じに誤魔化せる妥協点を探らなければならない(笑)

早く試乗したくて作業を焦り、
スロットルの遊びがなかなか決まらない。

 お二人の、初めての共同作業でございます、とな。 (by harabow氏)

 刀用のFCRキャブは基本的にインシュレーターにぶら下がっているだけ。

 放っておくと加速ポンプがカムチェーンテンショナーに当たって、振動で削れていってしまう。

 なので、makotoさんはフレームにタイラップで吊っている訳です。

そして、FCR貯金を始められたharabow氏(笑)

 低速域の濃い、薄いを判断する簡単な方法。

 エンジンの回転を3,000rpmぐらいで暫く保ち、ありえないほどのスピードで一気に全開!

 これで問題なく付いてくる様だと、確実に「濃い」症状。逆にストールするなら「薄い」。

 一瞬、息つきした後、遅れてンッと吹ければOKだ。(後方で興味深そうに観察するharabow氏。)

NS500のキャブは、思っていたより無骨な仕上がり。

 本編と関係ないおまけ画像♪ 左は、あのNS500のキャブレターです。

 当時は市販レーサーが存在しなかったから、ワークスで用いられていたモノホンです。意外と無骨だね。

 右が、NAG S.E.D.の名作、PAXキャブのカットモデル。

 ベースはケイヒンPJ38で、ボディに大改造が施されている。

坂田選手や上田選手、そして沼田選手も、PAXで勝ち、そして世界に旅立っていった。

 巨大な超ショートファンネルが印象的なPAX。

 本田技研時代にこんな形状のキャブを造りたい…、とプレゼンしたら上司から馬鹿野郎と怒鳴られて、

 それが独立のきっかけになったそうな(笑)

 この反骨精神は、かの本田宗一郎氏に通じはしまいか。

日夜、小人さんたちが働いて…、
くれていたらよいですね。

 永冶氏ご自身が、「仙人のおもちゃ箱」と称するNAG S.E.D.の全景。

 民家の中にぽつんと佇む小さなファクトリーには、何処かお伽話的な雰囲気が漂う。

 永冶氏自慢のハイエースは、RAM圧加工+NAGバルブで、

 空を飛ぶような加速と低燃費を実現しているという。


セッティングが済んだFCRを刀号に装着し、早速試乗。

初めの交差点ですぐに、極低速のパワーデリバリーがスムーズになっていることが分かった。
アイドリングも、「ストールしてるんじゃないか」と心配するほど静かだ。 < 注:当社比
国道に出ると、丁度クルマが切れて、目の前にいい感じのストレートが…。
ここぞとばかり、アクセル全開!

田園風景に空冷四発のカン高いエグゾーストノートが木霊する。 < 注:近所迷惑

シフトの繋がりがいい。
また、これまでは全開加速で回転のノリが僅かに途切れる部分があったのだが、見事に解消している。
大きな問題ではなかったので、こんなものと諦めて放置していたのだけれど、
たったあれだけでここまで良くなるなんて!


harabow氏:「やー、開けてましたねえ♪」

永冶氏:「セッティングが出ると、排気音が乾いた音になるんだよ」


どうやら、NAGの展望台から全てチェックされていた様です…(汗)


ヘルメットの上にお花畑が見える筈。
花びらを撒き散らしながら走ってきたのです。
見えませんかそうですか。


ベースのセッティングがあまりにとっ散らかっていると、
多少てこずることもあるらしいけれど、永冶氏の言われた通り丁寧に作業を進めて行けば、
ぽんぽんと階段を掛け上がる様にバイクの調子が良くなって行く。
その技を目の当たりにした身としては、やはり驚きだ。
話を聞いて、ちょっとは理解したつもりになっても、簡単に真似できることじゃない。

キャブ仙人殿、ありがとうございました。
少なくとも、ここにUPした内容は、後で自分でも実践できる(?)…と、思います。たぶん。おそらく。

Special THANKS : (株)NAG S.E.D.代表 永冶 司様 & harabow氏 Blog『趣味の徒然』    

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