カタナ月記   Last Update: 2013/04/24 First Update: 2012/05/07  ※後日談を追記。

負圧式燃料コックを手動式に改造する

刀の燃料コックは、レース用キャブに換えて全開走行を続けると、
流量が不足してガス欠症状を起こすことがある。

具体的な例を上げると、全開加速5〜8秒ほどでエンジンがごぼつき始める。
こうなるとスロットルを戻してペースを落とすか、一旦、停まって休憩するしかない。
もちろん公道でそんな走りがそうそうできる筈もなく、
僕は、2年ほど前、友人の誘いで走った富士スピードウェイでこれを体験した。

厄介なのは、一度この症状が起きると、キャブの油面が落ちつくまで暫くまともに走れなくなることだ。
コックをPRIに切り換えても、すぐには快復してくれないんだよね。

実を言うと、似たようなことは以前にもあって、原因にも薄々気付いてはいたんだけれど、
そこまで頑張って走ることは滅多にないから、さほど気にかけていなかったわけ。

スーパースポーツを追うおれ。だが相手にされていない。
・この後、立ち上がりで失速してコースアウト。140kmくらい出てたから、かなりやヴぁかった。


その走行会には、たまたままめしばさんが遊びに来ていたので、ちょっと相談して(ボヤいて)みた。


「あー、私も竜洋(※:スズキのテストコース)で経験したことあります」

「ピンゲル(※:米国製のハイフローコック)とかにしないと直りませんかねえ」

「ふつうに走るぶんには問題ないんだから、ン万円もお金をかけて対策するのはもったいないですよ。
 GPZ900用のコックを流用するひとがよくいるみたいですが、(流量は)刀のコックとあまり変わらないと思いますね。
 それより、負圧式コックはダイアフラムの作動範囲が狭いことがボトルネックになっているから、
 手動式に改造しちゃえばいいんです」

「PRIにすれば(手動式のONと)同じことなんじゃないですか?」

「それがねえ。ON/RESよりPRIのほうが穴が小さいんですよ」

「まjっすか。でも、燃料コックを改造なんて…」

「バラしてみればわかりますが、そんなに複雑な構造じゃありません。
 冬休みの宿題みたいな感じでちゃちゃちゃっと♪」


…てなわけで、2年ごしの宿題をやるです(笑)

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純正キャブで流量不足が発生することは先ずないと思います。
レース用キャブでも、実際にガス欠症状を経験したことがないひとは、気にしなくていいと思う。
だって、不具合がないなら改造する必要ないじゃん。

手動コックは、OFFに戻すのを忘れてバイクを放置すると、
キャブがオーバーフローしてエンジンにガソリンが混入する危険があるからね。

断っておくが、これでもちゃんとパークリで洗っている ネットで調べてみると、
年式によってビミョーに形状が異なるようだ。 左右どっちから出しても二次加工で対応できる形状。

我が、刀号の、25年モノ長期熟成燃料コック。
刀の燃料コックはアッセンブリでしか取れなくて、新品は6,450円(2012年3月時点)もします。
こーゆう高価な部品に対して、後に引けない改造を施すのは緊張しますね。

分解時はプレートのこじり過ぎに注意。 真ん中の丸い溝ににスプリングが収まる。 この突起も削っちゃおうと思ったんだけど、
めんどうなのでやめた。

“FUEL-ON/RES/PRI”の刻印が入ったクリップを外すと、レバーが外れます。
この(もとは真っ白だったと思われる)樹脂製のパーツで燃料の通路を切り替えているわけですね。
レバーが嵌まる溝のカタチはビミョーに台形になっているので、
組み直すときに上下を間違える心配はありません。

ガソリンで少し変色してますな。25年だもんね。 PRIにしたところで、
とりたてて流量が増すことはないってことがわかる。 再び断っておくが、ちゃんとパークリで洗っている

確かにON/RESよりPRIの方が通路が狭い
ON/RESは約6mm(燃料ホースの内径と一緒)。PRIは約4mmてところ。
ユーザーがPRIのままレバーを戻し忘れたときのオーバーフロー対策かしら?

いずれにしても、燃料ホースの内径より大きなコックをつけても意味はないのだから、
ON/RESの口径を完全に活かせれば、ハイフローコックなんて不要…てことになりますね。

レバーの奥には板バネが仕込まれています。PRIにすると樹脂製のパーツの突起が板バネを押し、
ダイアフラムが開いて燃料の通路を確保する仕組み。

負圧取っていたところがカーボンの吹き返しで黒くなっている。 経年劣化によるダイアフラムの硬化も
流量不足の一因かもしれない。 僕にとってエポキシパテは、初めて使うケミカル。

負圧コックの機能を司るダイアフラム。
エンジン停止時はスプリングの張力で燃料の通路を塞いでいますが、
始動すると、負圧でダイアフラムが開いて通路が開きます。
このダイアフラムを取っ払って、負圧の入口をエポキシパテで塞いでしまいます。

エポキシパテにはいろいろ種類があるのだけれど、今回は耐ガソリン性が高いことが必須条件。
デイトナが輸入している『マルチメタルエポキシ』という製品を選びました。
ちと高価かったが、パッケージの謳い文句に拠れば、燃料タンクに開いた穴すら塞げるらしい。

ラップは二重にした方がいいかも。(割と簡単に穴が開きます) 何度も断るようだが、ちゃんとパークリで洗っている。 この画像見て気がついたんだけれど、
万一パテが剥がれてきたら通路が詰まるな…。

アルミトレイの上にラップを敷いて、割り箸で主剤と硬化剤を混ぜ々々します。
配合は5:5。約4分で硬化が始まるので、手早く負圧導入口とPRIの燃料通路を塞ぐ。
4時間で実用強度になるそうな。
常時ガソリン漬けになるとこだから、乾燥時間は充分にとっておいた方が良いかもですね。

ピックツールでぐりぐりやると外れるぞ。 うーん。見るからに流量が増した感じ。 破かないように注意。

PRIのときダイアフラムを開くためにある板バネも、要らないので外しちゃいます。
ダイアフラムはカッターで切り取って、ガスケットとして再利用。
ガスケットなしで組みつけると、ガソリンだだ漏れになっちゃうよw

Oリングはちゃんと新調しましたよ。
5gくらい軽量化できたかな?(笑) この負圧取り出しボルトは、
ホンダのモトクロッサーの純正部品だったか。 汚いとかゆーやつは自分が汚いんだよ。

燃料コックを組み直し、きちんと機能することを確認します。
刀の燃料コックはレバーがむちゃくちゃ固いけれど、Oリングにほんの少しシリコングリスを塗ると、
若干動かしやすくなるですよ。

そうそう、今まで負圧を取っていたとこを忘れずに塞がないといけませんね。

バイクを停めるときはかならずOFF(旧PRI)にすること!
(ややこしいな)


改造後の燃料コックは、“PRI”の位置が“OFF”となり、
“ON/RES”は通路全開!になります。もちろん、リザーブもちゃんと機能しますよ。

実走テストはまだそんなにできてないんだけれど、意外な効果として、始動性の向上が上げられます。
これは想像だけど、バイクを停めている間にもキャブの中のガソリンは徐々に気化して油面が下がっていくから、
特に長期間放置した場合なんかは、すぐにガソリンが落ちる手動コックの方が、
負圧コックより始動性に優れるんじゃないかな。

全開ガス欠病が治っているかテストしないとね。
さあて、どこでやるかな…。

 

【後日談】

手動式燃料コックへの改造後、燃料不足が原因と思しきガス欠症状は一度も発生していません。
以前なら確実に症状が出ていたであろうシチュエーションでも不安なく走れています。

僕がときどきサーキット走行を愉しんでいる袖ヶ浦フォレストレースウェイには、
富士スピードウェイのような超ロングストレートはありません。
しかし、全開区間が多いので、負圧コックのままでは恐らく30分走りきれないんじゃないかと思います。
僕の刀の燃費は、ツーリングなら13〜15km/Lですが、
サーキット走行では7〜8km/Lにまで落ちます。

そのくらい開け々々で走っても、とりあえずガス欠症状は出なかったです。

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ひとつ問題点らしきものがあるとすれば、
リザーブに入るタイミングが、以前より僅かに早くなった気がすることでしょうか。
具体的には、負圧コックならONで14Lチョイまで使えたところを、
手動式は13.5Lあたりでリザーブに切り替える感じです。

負圧コックが負圧で燃料を“吸い出す”のに対し、
手動式コックは重力による“自然落下”なので、タンク内の燃料が残り少なくなったとき、
燃料の供給がやや不安定になるためなんじゃないかとも思ったのですが…。
構造的に“吸い出す”わけではなく、負圧で燃料の通路を開いているだけなんですよね。

とゆうわけで、この現象について真相の程は不明ですw
まあ、給油は早めに、余裕をもって行いましょうてことで(いいのかしらそんなんで)

(2013/04/24 追記)

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