ある日、Hu-techへ遊びに行くと、 テーブルの上にカワサキ空冷Z用の削り出しパーツが転がっておりまして。 僕:「お。何ンかちょっとカコイイすね」 仁衡社長:「葱やんも、要る?」 僕:「じゃ宜」 …てな流れで造って戴きました。 刀用(スズキGS/GSX系) マニュアルカムチェーンテンショナーです。
・ワンオフだよん♪
見てのとおり、構造的にはシンプルこの上ないパーツ。 添付のM6ボルトはちょっと長すぎて、後で自分で短いの用意したよw
・まいどきったない写真でゴメン。
純正はオートテンショナーです。 ときどきノブを回して遊びを取ってあげるだけで、カムチェーンをいい感じに(?)張ってくれる優れもの。 何故わざわざマニュアル化するのかというと、 ノーマルのテンショナーはキャブをFCRなどに換装したとき干渉して削れてしまうんですね。 画像で削れた痕がわかるでしょうか。 キャブ本体をフレームにタイラップで吊るすなりして工夫すればクリアランスは確保できるけれど、 気づかず乗っていると、えらいことになる。
・上:純正テンショナー、下:マニュアルテンショナー
並べるとマニュアルテンショナーが如何にコンパクトに仕上がっているかわかります。 ちゃんと測ってはいませんが、純正よりだいぶ軽いですよ。
・実際に装着すると、こんな感じ。
マニュアルテンショナーの設定方法…、 つまり、カムチェーンの張り具合はどの辺りが最適値なのかということについて、 明確な答えを持っているメカニックって実は殆どいない。 要するに、これといった正解がない。 困ったときのなんとやらで、mixiで「わかんないよう」とつぶやいたら、 変態のひとや岐阜のひとや友人のブッチーさんまで、それぞれのやり方と注意点を教えてくれたw 手順をまとめると、こうなる。
1.圧縮がかからないように、予めプラグを抜いておく。
2.クランクをゆっくり回しながら、指先でテンショナーを締め込んでいく。(工具は用いない)
このとき、クランクの正転、逆転を小刻みに切り変える。(カムチェーンの弛みは回転方向が変わった瞬間に生じるため)
やがて回転方向を変えてもテンショナーが締まらないポイントに達する。
ここが“カムチェーンの遊びが完全になくなったポイント”である。
3.ここから僅かに緩めてテンションをちょっと抜いたところが、“とりあえずの調整ポイント”となる。
僅かに緩めてて、どんくらいなの? 理想は『張りすぎず緩すぎず』で、ほんのわずかに遅れて追従する程度、張りはあるけどぎりぎりのところ…。 いやだからどんだけ…w まあ、あまり神経質にならなくてもいいみたいだ。
・1回転(1.5mm)戻しで、チェーンの弛みが最も大きな位置を探すとこんな感じ。
カムチェーンの張り具合を調整するとき、 張り/緩みの変化をアタマの中でイメージしながらできるのであれば、ヘッドカバーを外す必要は特にない。 たまたま盛大にOilを吹いてしまい、 ヘッドカバーガスケットを交換しなければならなくなったため、こうして目視確認しながら調整することができた。 “とりあえずの調整ポイント”は、テンショナー1回転戻し(ねじピッチは1.5mm)としたが、 カバーを閉じてエンジンを始動すると、若干シャラシャラ音が聞こえる。 更に1/4回転締め込む。 耳を澄ませて、チェーン音が聞こえるか聞こえないかぐらい。 3/4回転戻し≒1.125mm。ねじの遊びを考慮すると、実際には約1.2mmてところか。 張りすぎても抵抗になるし、 カムスプロケットの磨耗が一気に進む可能性もあるから、こんなもんかな。 僕が「こんなもんか」と思っただけで、必ずしもこの位置がベストと言うわけではないです。 (サーキットがんがん走ってもぶっ壊れてないから、大丈夫だとは思うけど) ちなみにカムチェーンがOilを纏った状態と、 暫くバイクを放置してOilがクランクケースに落ちきった状態とでは、チェーン音の出方が変わってきます。 3/4回転戻しでも一週間以上エンジンを始動していないと、始めはシャラシャラ音が聞こえる。 スズキのエンジンは始動時のチェーン音が少し大きい傾向があるらしい。 油冷も、始動時は結構煩いです。すぐ静かになるけど。 あと、これは事前に知っておくべきことだと思うけれど、 マニュアルカムチェーンテンショナーは、構造上、どうしてもシール性が甘くなり、 調整ねじの隙間からOilが滲んできます。 滲んだOilはクランクケースの上に滴り、セルモーターの水抜き穴を通って、やがて地面に落ちてくる。 ン百キロ走って数滴程度だから、それに載って転んだりとかはまずないと思うけれど、あまり気持ちいいものじゃない。 マニュアル化したら、こまめにOilの滲みをチェックしてパークリとウエスで拭き取りましょう。 その作業を「めんど!」って思う人は、やめた方がいいかもねw --- カムチェーンテンショナーをマニュアル化した理由は、(キャブの干渉を避けること以外に)もうひとつあります。 というか、そっちの作業が本当の目的なんです。 実現がいつになるか未定だし、今回は長くなってしまったので、また別の機会に。