カタナ月記
First Update: 2018/01/09

七速から20年目のクリスマスプレゼント

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クランクケースからOilを吹いてしまった僕の刀号。_ノ乙(、ン、)_

当面の応急処置としてKE45を盛っているが、いつ再発するかわかったもんじゃないし、
そんな状態のままサーキット遊びを続けるのはちょっと気が引ける。
位置がシリンダーベースガスケットてのがまた厄介でね…。
クランクケースから上を全バラしないと交換できない。


・「外からで止まったんですか?」と某自動車メカニックに驚かれたが、止まりました。さすが信越KE45さま。


じぶんでピストンリングを交換してはや15年が経つ。
メーター読みの走行距離は10万kmを超えた。

このエンジンから、かなりの数の馬が消失しているのは乗り手として感じていた。
何しろホンの2年前まで、エアフィルターなしの直キャブで走っていたのだ。
ダスト吸いまくりで、バルブの辺り面は虫喰いだらけだろう。カーボンもたんまり堆積している筈である。
燃費は約12〜14L/km前後。サーキット遊びのときはその半分。
ノーマルキャブにノーマルマフラーのころは20〜22km/Lくらい走っていた。
本来、刀のエンジンの燃費は良い方なのである。

開けどきであることは間違いない。

しかし、いまどき刀のエンジンをやるとなれば、純正部品の高騰化も相まって、
相応の出費を覚悟する必要がある。15年前とはわけが違う。

基本設計が37年前、製造から約30年を経た旧車に乗り続けるために覚悟を決めて投資するか、
同じだけのお金で新しいバイクに乗り換るか、
それとも安心して乗ることができなくなったマシンに我慢して、おっかなびっくり妥協しながら乗り続けるのか。

そんな分岐点にいるのを感じながら、僕は何も決められずにいた。

---


「○○君じゃない?」

品の良い初老の紳士に近所の道で声をかけられたのは、そんな時期のことだ。
小学校のころよく遊んでいた友人のお父さんだった。

僕は軽い相貌失認なので、明確な目的があるときはともかく、
出会うシチュエーションが異なると、ひとの顔を識別することが殆どできない。
例えば、街中で偶然、親兄弟に会ったとしても、じぶんから先に気付くことはない。
そんなだから、道で突然誰かに話しかけられると軽くテンパってしまう。
目の前にいる人間が誰なのかを理解するのに、ひとより少しばかり時間を必要とするのだ。
(友人のお父さんが先に名乗ってくれたので助かった)


互いの近況など、ひとしきりの世間話の後、こんな話を持ち掛けられた。


「実はそろそろ、あの刀を処分しようと考えているんです。
 使える部品があるなら○○君にどうかなと思って…」


友人は故人である。


20年前にバイクの事故で死んだ。
そのとき彼が乗っていたのがイレブン刀で、僕が刀に乗り始めたのは、その友人の影響だ。
(だいぶ前にBlogで少し触れたことがあるので知っているひともいるかもしれない)

今にして思えば、そこまで仲がよかったわけじゃない。
でも、敬語抜き、おれおまえで話すことができて、遠慮なく互いの意見をぶつけ合い、
心おきなく喧嘩ができる最後の友人だったように思う。
そんな友人を大人になってから作るのはとても難しい。

腐れ縁のように付かず離れずの付き合いで小学校3年から二十代の後半まで一緒につるんでいた。
僕は成人してから乗り始めた晩生のバイク乗りだったから、
当時、バイクという共通の趣味を持つ友人は彼ひとりだった。

彼の死後、何処かバイク遊びにシラケてしまったじぶんがいた。
正直、バイクはもういいと思った。
でも、友人の死をきっかけにバイクを降りるというのは、どうにも面白くなかった。
逆の立場だったら僕はそうして欲しくないからだ。

それでふと、刀に乗ってみようと思い立った。

今も付き合いがある墨田のバイク屋のボスに刀を捜して貰った。
逆輸入のノーマルで、エンジンと車体がしっかりしていること。条件はそれだけだった。
刀に対する憧れや空冷四発への拘りなんてのは何もなかった。

僕は、半ば自棄で、半ば冗談のつもりで刀に乗り始めたのだ。


---


・事故車に見えないのは、生前の友人の仲間たちが“せめて形だけでもそれなりにしておこう”と部品を持ち寄って修理したから。


友人の両親は息子の形見である刀をずっと庭の片隅に保管していた。
触れるのは愚か、見るのも嫌だった筈だが、おそらく処分することもできなかったのだと思う。

曰く付きのバイクであるだけに決心するのは簡単じゃなかった。
生前の友人の友人に連絡を取り、こんな話があるのだけれど、どうだろうと相談したりもした。
「部品だけでも走らせてやったほうがn君が喜ぶんじゃないかな」
尤もな意見ではあるけれど、乗るのは僕だ。
あまり重いのは疲れるよ…。


二週間ほど悩んで、結局、車両ごと引き取ることにした。
業者に言い値で買い叩かれたり、バラバラにされてネットオークションに並べられるくらいなら、僕があの刀を使う。
そうするにあたって、友人のお父さんにはいくつかお断りをさせていただいた。
譲って貰う立場なのに図々しい話ではあるけれど。



もし僕がやらかして、
n君のマシンの部品を使用した刀を修理できないほどに壊してしまったら、
そのときは申しわけないけれど諦めて欲しい。
また僕が大きな怪我をしたり、仮にそれで命を落としたりするようなことがあったとしても、
気に病んだりしないで欲しい。
それは100%僕のせいだから。バイクってそういう乗りものだから。



友人のお父さんは優しく微笑んで、それを了承してくれた。



・メーターの距離は僅か23,616kmで止まっている。

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