Last Update: 05/07/20
ブレーキは重要保安部品であるだけに、 改造するにあたってmakotoさんもちょっとは勉強した。(教科書はバイク雑誌だけど。) せっかくだから一応まとめてみました。 中身の信憑性についてはあまり自信ないです。
・油圧レシオは、マスタシリンダへの入力が何倍になってディスクに伝わるかを示す係数。 ≪油圧レシオ算出の計算式≫ 油圧レシオ = キャリパピストン総面積 / マスタシリンダピストン面積 ・入力が同じなら、油圧レシオが大きい方が効力は大きい。(レバーのタッチは柔らかくなる) ・レバーのストローク量が同じなら、油圧レシオが低い方が効力は大きい。(レバーのタッチは固くなる) ・実際には、ホース、キャリパの剛性、キャリパピストンのロールバック量などが影響するため、 油圧レシオと効力、ストロークの関係は必ずしも一定ではない。
油圧レシオ | 低い ⇔ 高い | |
---|---|---|
影 響 | (同じ入力に対する)効力 | 小さい ⇔ 大きい |
レバーストローク | 小さい ⇔ 大きい | |
マスタシリンダ径 | 大きい ⇔ 小さい | |
キャリパのピストン径(総面積) | 小さい ⇔ 大きい |
油圧レシオを大きくすれば、ブレーキ効力は上がる。 しかし、ただ大きくすればいいって訳ではなく、 レバーのタッチ、つまりレバーストローク量とバランスをとりながら設定する必要がある。 では、どのくらいが適当なのだろうか?
車種 | ピストン径 | 総面積 | マスタシリンダ径 | 面積 | 油圧レシオ | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | |||||
RVF400 | 30.23 | 27 | - | 2580.59 | 14.0 | 153.94 | 16.76 |
CBR400RR CBR600F |
25.4 | 25.4 | - | 2026.83 | 12.7 | 126.68 | 16.00 |
CBR900RR | 33.96 | 32.03 | - | 3423.08 | 15.9 | 197.81 | 17.31 |
VTR1000F | 30.23 | 27 | - | 2580.59 | 14.0 | 153.94 | 16.76 |
CB1300SF | 30.23 | 25.4 | 22.65 | 3254.75 | 15.9 | 197.81 | 16.45 |
GSX1100S刀 | 38 | - | - | 2268.23 | 15.9 | 197.81 | 11.47 |
≪キャリパピストン総面積算出の計算式≫ ((ピストン径/2)^2 * PI) * ピストン数) * キャリパ個数 ※注)対向式キャリパの場合の場合、ピストン総面積の計算は片側ピストンのみで行なう。反作用がどーとか云々。 ・片押し式も対向式も、剛性や抵抗などの条件が同じにできれば性能的な差はない。(実際は対向式の方が有利。) ・4potでも6potでも、油圧レシオの設定に大きな違いはない。 ・400cc 以上のオンロード車は、約16〜17前後の油圧レシオに落ち着くのが一般的らしい。 ・重量車で、より強い制動力が必要になるに従い、キャリパもマスタも大型化する傾向にある。 ・ピストンがパッドを押す力が同等なら、ピストン総面積(即ちパッドとディスクの接触面)が大きい方が制動力は高い。 表から、刀の油圧レシオがかなり低いことが分かる。 当時のキャリパーが高いレシオに耐えうる剛性を持っていなかったためではないだろうか。 (ディスクブレーキのキャリパーには、数百〜千kg以上の負荷がかかる。) この低い油圧レシオにも関わらず、刀のブレーキタッチはぐんにゃりしている。 ANDFの作動にストロークを奪われてしまう上、STDキャリパーが油圧に負けて歪んでしまうからだ。
キャリパ | ピストン径 | 総面積 | マスタ | シリンダ径 | 面積 | 油圧レシオ | 備 考 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | |||||||
STD | 38 | - | - | 2268.23 | STD | 15.87 | 197.81 | 11.47 | |
STD | 38 | - | - | 2268.23 | APロッキード CP3125-2 |
17.0 | 226.98 | 9.99 | 現在の仕様 |
ロッキード(CP3359) | 41.3 | - | - | 2679.29 | ↑ | 17.0 | 226.98 | 11.80 | |
ブレンボキャスト (40mmピッチ) |
34 | 30 | - | 3229.56 | ↑ | 17.0 | 226.98 | 14.23 | 今回調達したのがこれ。 俗に言うブレンボ1pin。 4pot Racingと同じパッドが使える。 (市販車の純正に多いのは2pin。) NISSIN の鋳造も同じピストン径の様だ。 |
ブレンボキャスト (60mmピッチ) |
34 | 34 | - | 3631.68 | ↑ | 17.0 | 226.98 | 16.00 | 4pot-4padの新型。 ドゥカのSB系などで用いられている。 あまりつけている人がいないので これも候補に上がったが、 重量が1pinに比べて約300g重いので没。 |
NISSIN 6pot | 30 | 25 | 22 | 3155.73 | ↑ | 17.0 | 226.98 | 13.90 | かつてGSX-Rとかに使われていた奴。 現行は進化してラヂアルキャリパになっちゃったけど。 |
僕が現在使っているAPロッキード製マスタシリンダ CP3125-2 は、 レバー比を変更することで、シリンダ径をφ16〜19mm相当の範囲に調整することができる。 (※でも、調整するとレバーの位置とストローク量が変わるため、最大も最小も使いづらい) 表中は間をとって、φ17mmで計算した。
・トータルレシオは、レバーへの入力が最終的に何倍になってローターに伝わるかを示す係数。 ≪トータルレシオの計算式≫ トータルレシオ = 油圧レシオ × レバー比 ・レバー比は、レバーへの入力が何倍になってマスタシリンダに伝わるかを示す係数。 ≪レバー比の計算式≫ レバー比 = 力点〜支点間の距離 ÷ 支点〜作用点間の距離 ・横置きマスタを用いた場合、レバー比は、手のかかるところを力点として計算して、1:3 〜 1:4 前後が適切らしい。 ・レバー比を大きくするとブレーキの効力を増すことができるが、ストロークも大きくなる。 ・実際には、レバーを操作する位置が人によって異なるため、レバー比まで考慮してブレーキシステムを比較することは難しい。 (※)普通は油圧レシオで検討する。 ・要は、STDがφ15.9mmの横置きマスタなら、メーカーが違っても、 同じφ15.9mmかそれに近いサイズの横置きを選択しておけば大きな問題はない。
・縦置き(ラヂアル)マスタの場合は、横置きに比べてレバー比がずっと大きく、φ19mmが 横置きのφ15.9mmに相当する。 ※ただし、メーカーやキャリパーとの相性に拠って異なるケースもある。 ・ラヂアルマスタは、油圧レシオを小さく、レバー比を大きく設定することができるので、 効力を落とさずブレーキタッチを良くすることができる。
・ディスクローターは大きい方が制動力が増す。 回転している円盤を止める時、真ん中より端っこを抑えた方がラクなのと同じことだ。 ・同じ理由で、同一条件のブレーキシステムなら、ホイールサイズは小径である方が効力が高い。 ・大径ローターを採用した場合、ばね下重量が増してハンドリングに影響を与える可能性がある。 ・鋳鉄ローターはタッチ、制動力共に優れているが、錆びやすいため公道に適さない。
1.キャリパ 今回選択したブレンボ40mmピッチの場合、 油圧レシオは、STD比で11.47⇒ 14.23と、今回の計画のポイントであるほどほどに強化レベルに上がる(筈)。 (CP3125-2は、マスタ側でレバー比を調整することも可能。) 社外パッドの選択肢が多いのもブレンボの魅力。 2.ディスク CB400SF Version Sの流用で、ディスク径は φ275mm ⇒ φ296mmと、僅かに大きくなる。 刀カスタムに使われることの多いφ320mmは、ちょっと大きすぎるのではないかと考えた。 Final Editionはφ300mmのディスクにトキコの4podキャリパを採用しているから、バランス的にはこれに近い。 ディスクの大径化に伴うばね下重量の増加もほどほどに抑えることができる。 机上論では何となく良さげな感じがするじゃないですか。 --- さて、この検討結果に対する仁衡氏のコメント。 > すごいでーただ〜! > > でもね、 自分でも言ってるけど、 > つけてみないとわかんないんだな〜これが・・・ > パッドとディスクの愛称とか > ディスク経とホイール経の愛唱とか。 > マスターとキャリパーの哀傷とか・・・・ > 確かに大体は解るけどね。 > > でも、すごいなあ〜 > 関心しました。 > 頭ではわかっていたけど、 > 数字と表にすると、わかりやすいですね。 そーなんだよねー。付けてみないと分からないんだよねー。