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僕がFCRを十数年、ファンネル仕様で7万km以上使っているという話をすると、皆、一様に驚いた顔をする。 それというのも、FCRは浮動バルブやボディ本体の摩耗が早くて、 きちんとメンテナンスしても、持って2〜3万km。基本的に消耗品てのが定説なんです。 FCRだけがそうというわけではないのだけれど、 他のレーシングキャブと比べて、とりわけ寿命が短いというのには同意。 もちろん、僕のだって『絶好調!』…だったてわけではなくて、 低中速域のフィーリングの悪化は、数年前から無視できないものになっていました。 回転の落ち方が不安定だったり、貼り付きが出ることもしばしばで、 走りのリズムが決まっているサーキットでは誤魔化しが効くにしても、 周りの交通状況に合わせて臨機応変な対応を求められる公道での走行は、なかなかにストレスフル。 ぶっちゃけツーリングが楽しくない…。 いい加減ボロがきていたんです。 もう充分にもとはとったから、そろそろ買い換えどきでしょ。 最も安全な選択肢は、今と同じFCR37。 扱い慣れているぶん安心だし、新品にすれば劇的に快適度を取り戻すことができるはず。 セッティングパーツやデータも流用できる。 でも、それじゃつまんねえよね? どうせなら新しいことにチャレンジしてみたいじゃない。 そんなわけで候補に上がってきたのがCR。 理由はかんたんで、TOTのモンスター使いたちと同じキャブを使ってみたかったから。 でも、ただのCRじゃない。 プライベート・チューナーとして名高いまめしば氏がリリースしているCR-Mキャブレターです。
・小田原市栢山にある『まめしばファクトリー』。迷子にならぬようGoogleMapのストリートビゥで予め検索。
2月の初めごろ、意を決してまめしば氏にMailすると、 その日のうちにレスがきて、CR-M33とCR-MB35をテストさせて戴けることになりました。 旧い空冷四気筒に乗っていて、じぶんでバイクを弄るのが好きで、 そこそこ走りも愉しまれるひとなら、まめしば氏のBlog『GS1000と日々の日記』を、 一度くらいは覗いたことがあるのではないでしょうか。 今や自身のファクトリーまで立ち上げておられるので、 “プライベート”という表現に違和感を感じるひともいるかもだけれど、 まめしば氏と(細くて)長い付き合いの僕にとっては、 やっぱりプライベート・チューナーという響きの方がしっくりくる。 もともとはふつうの務め人で、 自分が使いたくて作った部品を「おれも欲しい」というひとに分けているうちに、 どんどん規模が大きくなって、やがて法人化せざるを得なくなった。 そんな経緯で生まれた『ファクトリーまめしば』。ご本人も、まさかこんなことになるとは思ってもいなかったそうですw 現在に至るまでには、さまざまな葛藤や難しい決断があったはず。 穏やかな微笑みをたたえて「ここがわたしの居場所ですから」と語るまめしば氏の表情からは、 この仕事を糧として生きていくことを決めた男の揺るぎない決意を感じました。 考え方が論理的で頭の回転が早く、ばつぐんの行動力とバイタリティを持っているひとです。 気持ちよく乗れるバイクを走らせるために、手間をかけることと考えること(ここ大事!)を惜しまない。 その姿勢は、昔からちっとも変わっていません。 頭脳的な変態とでも申しますか…。 実はひとみしりのmakotoさん、 こーゆうアタマがいいひとの前では、緊張して委縮するかテンパっちゃうかのどちらかです。 背伸びしてもホントに背が伸びるわけじゃないから、 等身大のじぶんでいるしかないんだけれどね。 念のためお断りしておきますが、ご本人は気難しいなんてことはまったくないです。 気さくで話しやすくて、優しいおじさんですよw
久しぶりの再会に旧交を温める会話をひとしきり済ませると、 「そろそろ始めましょうか」と、手慣れた手つきでキャブの交換作業を始めるまめしば氏。 あたりまえだけれど、僕が同じ作業をしたら倍以上の時間がかかります。
画像はCR-M33です。 FCR同様、CRにも小排気量用のスモールボディと、大排気量用のラージボディがあります。 33はスモールボディの最大口径で、35はラージボディの最小口径。 このCR-M33は、まめしば氏がご自身のKZ900LTD用に組んだもので、高剛性連結ステーとTPSが装着されています。 僕の刀は旧式のアナログ点火なので、TPSは使えません。 そのため、試乗時はコネクターが宙ぶらりんになりますが、まったく無問題。 刀でTPSを使うためには、点火方式を国内仕様のデジタル式に交換して、 まめしばファクトリー謹製スペサルマッピングが入ったウオタニのコントロールユニットを組み込む必要があります。 レーシングキャブの試着試乗なんて前代未聞ですよね? 世界中捜しても、そんなんさせてくれるとこなんて何処にもないんじゃないかと思います。
・もとの写真が逆光で真っ黒だったんで、補正がたいへんだったのは内緒
CR-M33のフィッティングを済ませ、僕のマシンに跨って試乗に出て行かれるまめしば氏。笑顔がいいよねえ。 ポン付けで、軽くアイドルを調整しただけの状態です。 FCRならともかく、CRでこれができちゃうてのは、なかなかにすごいことなんですよ。
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