カタナ月記
Last Update: 2017/04/05   First Update: 2016/12/18

『鬼脚』は“おにあし”ではないのだよw

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話は春先にまで遡ります。

4年前、刀でのサーキット遊びを始めてから、
2年に一度で済んでいたタイア交換が毎年の恒例になりましたorz

今年も履きなれたBT-39/45の組み合わせで行こうと思ったんだけれど、フロントの39がメーカー欠品。
方々探し回ってみたものの、19インチのハイグリップバイアスなんて何処も在庫してない。
タイア屋さんがメーカーの出荷履歴を調べたところ、BT39 for Americanは基本的に指名買いしかされないタイアのようで、
この半年間、1本以上オーダーをした問屋は一軒もないそうな。

どんだけマイノリティーですかw

こりゃ、何度も熱が入ったつんつるてんのタイアで、
おっかなびっくり走り初めるしかないかなあと途方に暮れていたら、
SOHCエンジニアリングの鍛冶屋氏から。。。


「コンチあるよー。要る?」


「く、ください。。。」



まさか、ブリヂストンが手に入らなくてコンチデビューすることになるとは夢にも思わなんだw

ほんとうを言えば、去年と同じ条件で、
FCRφ37とCR-Mφ33キャブレターを比較したかった。
一度にいろいろ換え過ぎると、何が良くて何が悪いのか、わかんなくなっちゃうから。

とはいえ、手に入らないものはしかたない。

コンチクラシックアタックと言えば、現時点で最強無双と噂の19インチタイアです。楽しみなのです。
リアはざんねんなことにサイズ設定がなくて、BT45Vのままとゆう、いかにも中途半端な仕様なんですけれどねw


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4月、5月と一回ずつ、袖ヶ浦でサーキット遊びして、
まっさらになったキャブのセッティングを模索しながらも、自己ベストはあっさりクリア(ここだいじ)。

しかし、タイアの良さは感じるものの、もうひとつ気持ちよく乗れていない僕がいました。
コンチはよく寝てよく喰い付き、タイアの剛性感も非常に高い。それはわかる。
でも、逆にバンク角任せ、コンパウンドのグリップ任せになっているような印象で、
いきなりズバッと限界を超えてしまいそうな不安があった。
どうもフロントフォークがに敗けちゃってるみたいなんだよね。
STDのフォークスプリングじゃもう限界かなあ…。

現在の脚回りではコンチクラシックアタックの性能を生かしきれない。

ここに至って、僕は初めて、フロントフォークスプリングの交換を考えるに至りました。
ただ、如何せん経験のないことだから、どんなレートのスプリングにすればよいのか、皆目見当がつかない。
素人が見当違いのスプリングをオーダーしてお金と時間を無駄遣いするより、
実績があるものをベースにした方がセッティングの近道だよね。

公道もサーキットもがんがん遊べる刀造りのノウハウを日本一持ってるお店といえば、ここでしょ。
…というわけで、勇気を出して千葉のオオノスピードさんに相談してみました。


先ずは空気圧がぜんぜん間違っているところを突っ込ますw



オ:「210kpa?そりゃパンクした状態で走っているようなものだよ。240kpaは入れなくちゃ」


僕:「そんなに高くしちまっていいんですか?」


オ:「コンチは今までのタイア(=バイアス)とは違うからね。」


空気圧を下げて面圧を稼ぐというバイアスの考え方は捨てろ、ということのようです。


『鬼脚(KIKYAKU)』


オオノさんとこでリリースしているイージーオーダーのフロントフォークスプリングの商標です。
なんちうおそぎゃーネーミングでしょうか。
(長いこと“おにあし”と呼んでいたのはないしょだぞ!)


とりあえずのお試しレートとして0.85kg/mmを勧められました。
0.85kgの荷重で1mm縮むスプリングです。

それ以上やそれ以下の設定もあるけれど、
別の設定をチョイスしたユーザーも殆どは0.85kg/mmに戻ってくるそうで、ここから始めるのが宜しかろうと。
僕が欲しいのは“袖ヶ浦を18〜19秒台で安定周回出来て、その気になれば17秒台に入れられる”脚回り。


しかし…、「17秒というと、0.85というわけにはいかないでしょうなあ…」…とオオノさん。


いずれにしても、シングルレートスプリングのフィーリングを学ぶところから僕は始めなくちゃいけない。

最初の一歩は、素直にお試しレートから行きましょう。
速く走れたらもちろん嬉しいけれど、レースに出ようてんじゃないし、ラップタイムはおまけみたいなもの。
怖い思いをせず愉しんで走れれば、それでいいんです。



上が『鬼脚』。下はSTDのフォークスプリング(おそらく'90年式モデル(SM)のもの)。

一見して、全長がまったく違うことがわかります。
後述しますが、これが『鬼脚』最大の特徴であり、実走フィーリングの肝となる部分なのです。

そして、『鬼脚』がシングルレートであるのに対し、STDは巻きピッチが途中から異なるダブルレート。
スプリングを変えるにあたって、STDのレートと特性くらいは把握しておいた方がよさげですね。
ちょっと面倒ですけれど、計算してみましょう。
コイルスプリングのレートは、各部の寸法がわかれば、机上計算でおおよそを求めることができます。
かの吉村誠也さんの日記に、確かそんな記事があったことを思い出し、捜してパクらせていただきましたw

・レート(K)を求める計算式

K = ( G * d ^4 ) / (8 * nD ^3)

  G: 横弾性係数  … 8000(固定値)一般的なクルマや二輪のばねの材料に使われる硬鋼線の値。
  d: 線径  
  n: 有効巻き数  … 座面となる両端を除く巻き数
  D: コイル内径  … コイル外径 - 線径

STDのフォークスプリングは、線径(d):4.3mm、有効巻き数(n):59、コイル内径:22.7mm。
有効巻き数の内訳は、ピッチの粗い方が35、細かい方が24です。
ダブルレートの場合、全体の巻き数で1段目を、ピッチが粗い方の巻き数で2段目を計算します。
同じ線径、同じ内径であれば、巻き数が多いほどレートが低く、少ないほどレートが高い。
意外なことに、長さは関係ないんです。

それぞれの値を公式に当て嵌めると、以下のような結果になります。

  K1(1段目) = (8000 * 4.3 ^4 ) / (8 * 59 * 22.7 ^ 3) ≒ 0.495kg/mm

  K2(2段目) = (8000 * 4.3 ^4 ) / (8 * 35 * 22.7 ^ 3) ≒ 0.86kg/mm


STDスプリングのレートは、約0.495〜0.86kg/mmということですね。

次に、レートが切り替わるポイントです。
スプリングには、ピッチの大小に関わらず均等に縮むという特性があります。
つまり、荷重を徐々に増やしていくと、ピッチの細かい方が先に縮み切って線間密着する。
線間密着した部分は実質的に巻き数ゼロとなるため、
そこから先はピッチの荒い方、つまり、2段目のレートが有効になるわけです。

均等に縮んでいくわけですから、
ピッチが細かい方の隙間の広さを計測して、全体の隙間の数を掛けてやれば、
全長が何mm縮んだとき、ピッチが細かい方が線間密着するのかわかります。

ピッチが細かい方の隙間 * 全体の隙間の数 = 2.15 * 59 = 126.85mm

約127mmストロークしたところが、レートが切り替わるポイントですね。


続いては、全ストローク量。
これは隙間の総計だから、全長から両端の座面の厚みと、巻き数ぶんの線径を引いてやればよい。


全長 - (線径 * 巻き数) - (両端の座面部分の厚み * 2)  = 494 - (4.3 * 59) - (5.5 * 2) = 229.3mm


約230mmてとこでしょうか。
STDのスプリングは42mmのプリロードを掛けて組み込まれているから、0Gの残ストロークは約190mm。
1Gで約50mm程度沈むので、そこから更に約30mm沈んだとこまでが1段目のレート、
残り約110mmが2段目のレートが作用する範囲ということになりますかね。

隙間の広さは経年劣化で微妙にばらつきがありましたし、
所詮僕なんで、巻き数の数え方とか各部の寸法の測り方とか割とてきとうです。
あくまで参考というか、ぶっちゃけ、あまり信頼しないでくださいw

細かい数字はどうでもよくて、動きのイメージが把握できればいいんです。

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ところで、既に気付かれたと思いますが、
『鬼脚』(0.85kg/mm)は、STDの2段目(0.86kg/mm)とほぼ同等のレートです。
けしてノーマルから大きくかけ離れた設定ではないんですね。



(つづく)

Special THANKS:OHNO SPEED    

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