スプリングの全長がSTDより約40mmも短いわけですから、 ノーマルフォークに『鬼脚』スプリングを組み付けると、プリロードはほとんどかかりません。 レートを上げたとき、プリロードを落とすというのは、理に適った考え方だと思います。 例えば、レートが0.49kg/mmのスプリングに40mmのプリロードを掛けて組み込んだ場合、 0.49*40 = 19.6kg以上の荷重がかかるまで、スプリングは1mmたりとも沈まないことになる。 0.85kg/mmのスプリングに同じ量のプリロードをかけたとすると、起点は0.85*40 = 34kg。 つまり、34kg以上の荷重をかけなければスプリングは動かない。 やっと動き出したところで、そこから立ち上がるレートはSTDの約7割増し。 フロントフォークは左右2本あるので、その差は更に倍。 そんなんポンポン跳ねちゃってまともに走れないだろうし、乗り心地も最悪な筈です。 高めのレートでストロークを抑えて踏ん張り感を持たせつつ、プリロードを弱め初期から動きやすい脚を造る。 同時に、スプリングの全長を短くして、フロントがやや低めの車体姿勢を作り運動性を上げる。 素人考えではありますが、その辺りが『鬼脚』の狙っているところと思われます。
フォークOilは「MOTULの#20で、油面190mm(STDの約30mm上げ)から始めて」という指示でした。 ほぼ同じ動粘度指数のa.s.h.#58の買い置きが手元にあったので、先ずはそれを使用。 早くテストしたかったんだもんw ちゃんと測ってないけど、目に見えて前が下がりました。 サグ?別に合わせてませんよw 個人的にあまり意味がないと思うというか。 STDと異なるレートのスプリングを組み込んで、静止状態の車体姿勢だけノーマルと合わせてもしようがないでしょ。 そもそも荷重がかかったときの沈み方が違うんだもの。1Gは違う数値になってとうぜん。 合わせるべきは、実際に走らせたときに気持ちいいと感じられる車体姿勢(ないしは重心の高さ)の方だと思うわけです。 そしてこれは、乗って決めるべきだし、実際に乗ってみなけりゃわからない部分です。 ある程度はイメージできるけれど、思いどおりにいかないことの方が多い。 ついでに言うと、体重とサスセッティングはあまり関係がない気がします。 バイクの中心(重心)はエンジンとライダーの存在で、シーソーの支点に重しを載せてもバランスは大きく崩れたりしない。 経験的に足回りがよくできたバイクは、体重の重い軽いに関係なく気持ちいいて評価になります。 そうじゃない場合は、たぶん乗り方や技量や走行ペースの問題なので、 そうした場合に各々に合わせたセッティングが必要になってくるのではないでしょうか。 タンデムはまた別の話です。 片方の作用点にひとひとりぶんの重しが載るわけだから、これは調整しないと上手くないよね。
同時に投入したオオノスピード製プリロードアジャスター。 下に見えるのは、ノーマルのスプリングの座金で、真ん中のO-Ringは外して使います。 サグは合わせないけど、走って気持ちー車体姿勢を見つけるためにも、 無段階調整ができるプリロードアジャスターは絶対必要。
こちらも同時投入のオオノスピード製ANDFキャンセラー。 シンプルな造りですが、裏側にOilの動きを妨げないためのちょっとした小細工があります。 --- 長い々々前フリが終わって、よおやくインプレに入ります。 このHPは、もともと僕の備忘録だからね。 僕が後で読み返したとき、何を考えてそおしたのかとか、結果どおしてそーなったとか、 (勘違いも含めて)その辺りを思い出せるようにしておかないと意味がないのですw 走り出しから驚いたのは、 フロントがあからさまに下がっているのに、怖さや違和感がまるでなかったこと。 この時点でイニシャルアジャスターは最弱。締め込みゼロです。 路地裏の小さな曲がり角でもくるりと向きを変えてくれるし、街乗りで固さを感じることもない。 ただ、プリロードを全くかけない状態でペースを上げていくと、やや腰砕けかなという感じがしたので、 少しずつイニシャルを絞め込んで、気持ちいい領域を捜していきます。
『鬼脚』スプリング、イニシャルアジャスター、ANDFキャンセラーの3点セットを組み込んで、 街中から峠道、舗装林道からサーキットまで、イニシャルをくりくり弄りながら1,000km以上走り込み、 最終的には、アジャスターのケガキ線上から3本目-1回転というところに落ち着きました。 プリロードの数値にすると5mmというところでしょうか。 僕レベルの走りなら、走るステージが何処であれ、これでまったく問題ありません。 街中のトロトロ走りでも乗り心地に不満は感じないし、 舗装がガタガタにひび割れて、ところどころに砂や枯れ葉が浮いた舗装林道もリラックスして走れる。 サーキットで膝やステップをガリガリ削りながらといったペースもOKです。 軽くタイムアタックするときでも、1回転締め込むくらいかな…。 逆に、リアサス(OHLINS PB)がばたばたと落ち着きないように思えて、 物足りなさを感じるようになってしまいました。 「フロントのプリロード5mm違いとかぜんぜんわからない」なんてひとがたまにいるけど、すごいうらやましいw ブレーキの入力や体重移動など、テクニックで気持ちいい車体姿勢を作っちゃえるひとなんでしょうねえ。 僕なんかは、最後は1mm単位です。善し悪しのジャッジは別として違いはすぐにわかります。 油面も、走り慣れた仕様から5mm変えると、ぜんぜん走れなくなっちゃうことが多いです。 (そんな僕が、走りだしから違和感なく走れたんだからびっくりですよ)
シングルレート(0.85kg/mm)の『鬼脚』は、 ブレーキのかけ始めから即座に、しなやかに踏ん張り感を出してくれます。 ブレーキてのはレバーを握った瞬間から制動力を発揮してくれるわけではなく、 伸びていたサスがすっと縮んで、反力を発生した時点で、初めて強く握り込むことができる。 ダブルレートのSTDスプリングは、1段目(0.49kg/mm)が作用している範囲が、いわば“遊び”になっていて、 最初は優しくブレーキをかけてフォークを沈め、2段目(0.86kg/mm)の領域に入り、サスの反力が高まるのを感じてから、 強めにブレーキングするというプロセスを踏んでいました。 『鬼脚』では、このテンポが大幅に短くなっています。 要はブレーキの掛け方が少し変わっているのですが、この点については、ちょっと慣れが必要でした。 最初はちょっとブレーキの効きが甘くなったような感覚を受けたんです。 だらだらブレーキングして中途半端なままストロークを使い切ってしまい、結果として止まれなくなっていたんですねw 特性を掴んできちんとブレーキングすれば、今まで以上に確実な減速ができます。 STDスプリングが持っていた“遊び”がなくなったことで、 アクセルのオンオフだけでピッチングを作って流していた緩いコーナーや切り返しなどでは、 若干ながらフロントに重さを感じるようになりました。 ひとつひとつの操作を、だらけることなく丁寧に行ってやる必要がある。 これらは慣れで対処できるレベルです。 大前提として、スポーツ性を向上させるためのパーツを投入しているのだから、 乗り手が対応しなくてはなりません。 (まだつづく)
Special THANKS:OHNO SPEED