カタナ月記
Last Update: 2017/1/3   First Update: 2016/10/02

セルボタン押下でパキーンてなる

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始動時にパキーンと言ったり、言わなかったりするものの、
一度エンジンがかかってしまえば、ふつうに走ることはできる。

確実に何かがおかしいのに、その何かがわからないことが気持ち悪い。


墨田のバイク屋には、既にケータイメールで症状を伝えていた。



「きゅる…、“ぱき”すぼぼぼぼ…。」



「圧縮が高い音だな…。」


ぼそっとそう一言つぶやくと、飛馬さんは作業場のリフトに僕の刀を移動した。


僕が先週、さんざんチェックした車体の左側(セルやステーターコイルのある側)には目もくれず、
おもむろにパルサーカバーを取り外す。



「これだね」




遠心ガバナのスプリングが吹っ飛んで絡まり、
点火時期が全開固定になっていました。



…て。


いっぱつで原因判明かよ!



墨田のバイク屋の華麗なるトラブルシュートに埴輪顔のmakotoさんでした。

遠心ガバナはクランク軸から回転数を拾ってイグナイターにパルス信号を送る装置です。
こいつがスタックしたため、セルを回したとき、ピストンが上死点に到達する遥か手前で点火してしまい、
スタータークラッチが圧縮敗けして「パキーン!」と悲鳴を上げてたというわけ。

点火時期というのは常に同じというわけではないんですね。
具体的にはピストンが圧縮上死点(Top Dead Center)に到達する少し前に火を飛ばさないと、
混合気が爆発することによって生じるエネルギーを効率よく使うことができない。
そして、ピストンの作動スピードが速くなっても、混合気が燃え広がる速度は常に一定だから、
エンジンの回転数が低いときに比べて、高回転時は早めに火を入れる必要がある。

回転数に応じて点火時期をズラすことを進角といい、
上死点を0°として、どのくらい手前にズラすかを、BTDC(Before Top Dead Center)という数値で示します。

刀の場合、BTDCの変化幅は12°〜37°で、2,500rpm以上はずっと全開固定です。
一度エンジンがかかってしまえば、ふつうに走れてしまった理由がこれ。
2,500rpm以下なんて、発進時しか使わないでしょ。
もちろんゴーストップを繰り返すような状況では極めてエンジンに良くないことは確かですが。


墨田のバイク屋曰く、遠心ガバナは定期的に分解してグリスアップするべきところなんだって。
18年間乗っていて、今までじぶんでカバーを外したことすらなかったよ…orz


ちなみに、イレブンカタナで機械式の遠心ガバナが使用されているのは'90年型までです。
'94年以降に販売された国内仕様はデジタル点火に変更されて、
もう少しキメ細かい制御がされているらしい。


↑こちらは飛馬さんのMk.IIの遠心ガバナ。
振動と遠心力でスプリングが外れないように、外側が爪で支えられているのがわかるでしょうか。
スズキのGSX系エンジンより設計も年式も旧いのにカワサキえらいね。

さて。原因はわかったものの、びろりーなになっちゃったスプリングは最早再利用できない。
代わりのスプリングが必要だ。

最初、飛馬さんはMk.IIのスプリングを外そうとしていた(笑)
構造は似たようなものと言え、スプリングの形状や長さが微妙に異なるし、
外すときに折れたりどっかに飛んでっちゃったりしたらアウト。そもそもこれ外したら、Mk.IIが走れなくなっちゃう。
気持ちは嬉しいけれど、それをして貰うと僕が困る。

「確か二十年以上前に、GS750にウオタニ付けたとき外したガバナが何処かにあったな…」




あった。このひとは神かw



「おれこーゆうの絶対捨てないんだよね…w」と飛馬さん。



GS750のガバナはイレブンカタナのそれと若干異なるものだけれど、応急処置には必要にして充分。
差し当たり無期限レンタルしてくれるって。ありがたやありがたや。


ざんねんながら、ガバナのスプリングはメーカーから単体で出ないのですが、
ユニット単位でなら、2016年現在でもスズキから新品を入手することができるそうです。7千円台だって。
部品が出るうちに何処かのタイミングでゲトしておかなきゃなあ。
欲しいのはあのちんまいスプリングだけだし、そこにン千円を投資するのはなんとも。。。

この際だから、国内仕様の点火系に交換して、ウヲタニさんとか入れてみたい気もする。
でも、そうなると、少なくとも十万円OVERコースだ。

どうも無期限レンタルに甘える方向で落ち着きそうな気配ですw

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旧いバイクと付き合う中で、じぶんの力ではどうにもならなくなったとき、
僕には、墨田のバイク屋Hu-techがついている。

飛馬さんがいてくれるからこそ、
僕は安心して(?)弄り壊すことができるし、自信を持って刀に乗り続けることができる。
墨田のバイク屋の存在に僕がどれだけ勇気づけられているか、
たぶんご本人は存じないのだろうけれど。

どちらかと言えば、ただの迷惑なのかもしれないけれど。たぶん。おそらく。

Special THANKS:Hu-tech facebook    

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