そらいろつうしん Last Update:2008/06/28   First Update: 2008/06/22


帰ってきた、そらいろ号 <後編>

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忙しい中、仙人殿が特急でヘッドを仕上げてくださったのに、
なかなかエンジンを組めずにいたのには訳がある。

注文したシリンダーのダウエルピンのサイズが違ってて、
どうしたものかと途方に暮れていたのだ。どうやら部品統合のミスらしい。
もともとついていたものは、ウォーターポンププライヤで外して、傷モノにしちゃったから再利用不可…。
余計なことしなきゃ良かった。

で、いささかギャンブル気味ではあったけれど、
ヤマハの部品情報検索サービスで、1JK(初期型SRX)ではなく、3SX(セル付きSRX)の部品番号を調べて再注文した。
幸いにもサイズが合い、無事エンジンを組み上げることに成功して今に至ります。

余計なことせずに、使えるものは再利用しよう。
エコ時代の心得だ。
上がもともと付いていたもの。下が、間違って届いたダウエルピン。
他にもいくつか、間違った部品が来て、仕方なく旧いのを再利用。
キャブのリターンスプリングとかキックのゴムとかも初期型の部品番号で頼むとヘンなのが来ます。

 
キックのSRXは、'87年と'88年にモデルチェンジを行っている。。
オークションでゲトした後期型のPLと、僕が先代オーナーから譲り受けた年代モノの初期型用PL。
実は、このダウエルピンの部品番号は、二本サスの前期型、後期型、そしてセル付きですべて異なっている。
PLにも誤植はあるし、初版以降で修正されているケースもあるから、
弄り派の旧車オーナーは、年式違いのPLを持っていてもけして損はないと思うよ。

20年以上前に生産されたオートバイの部品が、現在でも、メーカーに注文すれば出して貰えるってのは、
とてもとてもありがたいことなのだけれど、こーゆうミスは困ります。

ヤマハさん、しっかりしてね。
早くもIPCVが準備されている(笑) バルブの底はタコ棒が吸い付くように、
しっかり磨き上げられています。 リューターの痕の手触りがさらさらしてて気持ちいい。
仕上がったポートを直に観察したいので、永冶氏にお願いして、
バルブスプリングを組み付けない状態でヘッドを送って貰った。
 
入念に磨き上げられた吸気側に対し、出口側は燃焼室のすぐ上は段付きや凸凹を軽く浚った程度。
レースに使うわけじゃないし、組み合わせるのはSTDの吸排気系とあって、
「渾身の作と言うほど気合い入れてませんので、ガッカリなさらないように」とは永冶氏の弁。
配送時、バルブは燃料パイプを使用して固定されていました。 オイル下がりを起こしていたバルブがどれなのかすぐ分かる(笑) 吸い込まれそう。リュージュのコースを連想。
必要なところに的を絞った無駄のない仕事ぶりは、僕の性格的に萌えポイントだったりします。
隅々までぴかぴかにレストアされた車両より、道具として使い込まれたイイ雰囲気を持ち、
それでいて必要な整備がしっかり行われていて、絶・好・調!ってのが最高にカッコイイと思うんだよね。
 
インテークポートの入口と同径に削られたインシュレーター。
通路の段付きはほぼゼロ。ここも燃料の剥離性を考慮して、鏡面仕上げは行われていません。
何処にどのスプリングが入るのか、仙人殿のメモつき。 刀のときにお世話になってお気に入り工具に。 この板バネがいいんです。
この日のためだけに買ったと言っても過言ではない、
スズキ純正のバルブスプリングコンプレッサーの出番が来た。
板バネでバルブの傘を抑える位置をスピーディに調節できるので、とても使いやすいのです。
中途半端な安物を買うなら、こいつのほうがずっといいよ。
 
部品番号 部品名 価格
09916-14510バルブリフタ7,755円
09916-14910バルブリフタ アタッチメント Φ241,760円
09916-14521バルブリフタ アタッチメント Φ221,650円
09916-14530バルブリフタ アタッチメント Φ171,980円
 
価格はすべて'07年1月時点のもの。改定で値上がりしていても、数百円程度の違いだと思う。
アタッチメントは、この3サイズがあれば、大抵のエンジンに対応できます。
ちと撮影に無理がある。 姑息光線を喰らえ。ビームビーム。 汚いクランクケースとのコントラストが際立つ。
組み付けたコッタピンを落ち着かせるため、バルブの背中を無反動ハンマーでこんこんと叩く。
木片などを下に置いて燃焼室側をフリーにしておかないと、
バルブが飛び出して曲がってしまうこともあるので気をつけよお。
 
ピストンピンを一度外すと、ピンの溝にどうしても「返し」が出来てしまう。
同じピストンを再利用するとき、ピンがなかなか入らないのは、この「返し」に引っかかっているから。
そこで、目の細かいペーパーで軽く面取りした上で、白熱灯で暖めてピストンを膨張させる。
 
ここまで来たら、あと一息。ちゃっちゃと組み上げていきます。
素人メカ肉18のためにここまで…。 むろん、程度問題でっせ〜。 Tマークをきちんと合わせるのは意外に難しい。
おや?カムシャフトにメモが添えてある。面削でバルタイが少し遅れるとな。
 
…とは言え、削ったのは僅か0.1mmだから、実際は目視で確認できるかどうかの微小な差。
このイラストは大げさに書いてあるので、真に受けて組むと、歯車が一コマずれちゃう。
気づかずにうっかり一コマずれた状態で組んでシェークダウンしてしまったのは内緒。(内緒じゃない)
回るけどトルク感が乏しいエンジンになってしまい、走りづらかった。
 
つか、それ以前に、壊れなくて良かった…(汗)
本来なら、エンジン単体にして作業したいところ。 サイズごとに違う色のストライプは廃止されてしまった。 こんな奥のボルトにだって、手が届く。
先端精度も●Bやミ●ロイより優れていると思う。
そんな訳で実際の組み付けは、こんな感じ。ズレテいるかなんて、殆どわかんないよね?
ちなみに、ここまでやるとやり過ぎ。確実に一コマズレテます。
 
カムを固定するボルトとスプロケット穴の間にあるガタは、タイミングが遅れる方向で組むと、
IN側のバルブの閉じ始めが遅れる分、より多くのガスが燃焼室に導かれて充填効率が上がる。
クランクを正回転させ、テンショナーが張った状態で固定すると、自然にガタ取りが出来ます。
(もちろん、これも永冶氏の受け売り)
 
ところで、僕が個人的にとても気に入っている工具のひとつ、アサヒツールのダックスキーレンチ
通常、六角穴付きボルトを締結するには、60度以上の送り角度が必要だけれど、
コイツは両端を交互に使うことで、送り角度30度ぶんのスペースがあれば締結できる
シンプルだけど、素晴らしいアイデアだと思う。
 
※リンク先は、○天のネットショップで、欲しいサイズだけ単品で購入できます。
4、5、6mmの三本があれば、まず困らない。(今回の作業で使用しているのは5mmだけ)
別にアファリエイト代は貰ってませんよ(笑)
中古のSRXは、無理矢理外して、
このボルトを舐めちゃっている車両も多い。 朽ち々々レベルが激しい車両だと、
外す時にインシュレーターがばらばらになることが
たまにあります。そんときゃ諦めて新品に。
これもSRXには多いです。 スタータープランジャ(チョークケーブル)。
4型の場合、ここのゴムが硬化してひび割れていると、
二次エアを吸って加速不良を起こす。
初期型は案外平気。
SRXのSTDキャブ脱着作業は、慣れないとかなり大変。
でも、先にインシュレーターの締結ボルトを外して、エアクリをちょいと後ろにずらせば、
割と簡単に、インシュレーターごと、ぱこっと取り外し可能。もちろん、付けるのもラクチン。
ダックスキーレンチが便利なのは、正にこーゆう時なんだよね。
 
一番右の画像は、もうひとつのお気に入り工具、KTC プロフィットツールの両口スパナ。
僕の知る限り、オフセットを持つスパナはこれ以外に存在しない。
ちと価格が高いのが玉に瑕で、バイスがあれば、安物のスパナを加工して同じものが作れるかな(笑
どうしてもこれでなくちゃって場面はあまりないけれど、
奥まった場所にあるボルトやナットを扱うときに重宝します。
こうして画像に納めてみると、
改めて僕が磨き嫌いってのがバレテしまうなあ。 この位置にIPCVを付けると、ちょっとオイルミストが付きやすい。
現在、装着位置の変更を検討中。 撮影のため、少し整理したマイガレーヂ。
根岸研磨さんに磨いて貰ったエキパイの輝きが神々しい。
NAGでブラストしてくれたシリンダーの美しさと、
経年劣化で黄色く変色したクランクケースのコントラストが痛々しい(笑
 
ヘッドがNAGチューンだから、当然の如く、クランクケース内圧コントロールバルブ(通称IPCV)もセット!

さて、生まれ変わったエンジンは、
前述したカムの組み付けミスのみならず、キャブのリターンスプリングにも組み付けミスがあって(orz)、
すんなりシェークダウンとは行かず、本領を発揮するまでにまる一ヶ月近くかかっちゃった(笑)
素人メカニックはこれだから…。

でも、セットアップが決まった後は、そらいろ号史上、かつてない最高のコンディションに仕上がった。

NAGスペサルポート&IPCVのコラボレートで吹けが良くなり、
ワインディングでの常用回転域が上がったエンジンは、吸排気がSTDということもあって、神経質さ皆無。
クランクが少し振れ始めているため、回転し過ぎると振動が大きくなるけれど、
常用域では、角の取れた優しい鼓動がライダーを優しく癒してくれます。

後にClub@SRXの全国オフで、キャブ仙人殿を初め多くの方々に試乗していただきましたが、
おかげさまで非常に評価は高かったです。ほくほく。

レポートでは触れなかったけれど、フォークオイルはa.s.h. #40、
タイアも新品のBT45さま(あまりに素晴らしいパフォーマンスなので、僕は敬称を付けて呼んでいる)に交換して、
WPのリアサスも忠男レーシングに持ち込み、O/Hしていたんだよ。

久々にSRXで箱根man3に参加したときの一枚。

オイル下がりの影響で、冬眠前に15〜17km/Lまで落ち込んでいた燃費は、
一気に25〜30km/L前後にUPしました。

ずっと大きなバイクばかり乗っていたから、軽快なハンドリングがとても新鮮。
けして速くはないけれど、やっぱりビッグシングルは愉しい。
SRXみたいなオートバイはもう二度と出てこないんだろうなあ。大事に乗っていかなきゃ。

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Special THANKS : (株)NAG S.E.D.代表 永冶 司様    


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